EPISODE / MEMORY RECALL
アニメ 第13話 1989-01-23

第13話「手間の価値」

この回、何だっけ?

横浜中華街の有名店で雑な接客と料理に怒った山岡が、宝華飯店の豚バラ煮込みを「出来損ない」と酷評。初登場の周大人の屋敷で約3時間かけて本物のトンポーローを作り、人気ゆえに手間を省いた店と、それをありがたがる客の双方を戒める。

うろ覚えの入口

表には5語だけ。残りは検索の裏側で働いています。

記憶が戻ったところで、もう一段。

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第13話「手間の価値」

30秒で思い出す要約

山岡、栗田、花村、田畑は横浜中華街へ。人気店の横柄な接客に腹を立て、次に入った宝華飯店では豚バラ煮込みを山岡が「出来損ない」と酷評する。そこで初登場する周大人の屋敷へ移動し、山岡は約三時間かけて本物のトンポーローを調理。人気に甘えて手間を省いた店と、有名店をありがたがる客の双方に問題があることが示される。


この回はどんな話?

第13話「手間の価値」は、タイトル通り、料理に必要な「手間」を扱った回です。

しかし、「手間をかければ偉い」という単純な精神論ではありません。

物語の焦点は、

手間を省いたことで、何が失われたのか

にあります。

そしてもう一歩進むと、

店が手間を省くようになった責任は、店だけにあるのか

というところまで話が広がります。

山岡が批判するのは料理人。

しかし周大人は、その料理人を持ち上げ続けた客やマスコミにも矢印を向けます。

この二段構えが、第13話の面白いところです。


1|横浜中華街へ

今回は珍しく、文化部の女性陣が休日らしい時間を過ごしています。

栗田、花村、田畑が横浜へ買い物に出かけ、なぜか山岡も同行。

もっとも山岡は女性陣のショッピングにはほとんど興味を示さず、途中で競馬中継を聞きながら一人で離脱します。

その姿を見て、

「横浜に彼女でもいるんじゃない?」

という話になる。

初期アニメ版では、こうした本筋と無関係な寄り道を使ってキャラクターを少しずつ立たせています。

原作にはない場面ですが、「食の天才」以前に、山岡が競馬好きのだらしない青年でもあることを忘れさせないための小さな補強になっています。


2|「有名店だから」が免罪符になる

最初に入る人気店「大南楼」。

ここで早くも違和感が始まります。

家族連れが別々の麺料理を注文しようとすると、

「一つの家族で麺は一種類にして」

と言われる。

さらに山岡たちが取り皿を頼むと、

「取り皿は一人一枚」

と断られる。

理由は効率です。

安い料理を複数注文されると面倒。

皿を増やせば手間も洗い物も増える。

店側の事情としては理解できます。

しかし、その効率化のコストを一方的に客へ押しつけた瞬間、サービスそのものが崩れ始めます。

面白いのは、客の側も、

「有名店だから仕方がない」

と納得しようとするところです。

第13話のテーマは、すでにここから始まっています。


3|「この豚の煮込みは出来損ないだ」

次に訪れる宝華飯店。

春巻き、フカヒレスープ、豚バラ煮込み、牛肉と野菜の牡蠣ソースなど、華やかな料理が並びます。

ところが山岡は豚バラ煮込みを一口食べると、

「この豚の煮込みは出来損ないだ」

と言い放ちます。

いつもの山岡です。

当然、料理人は激怒。

包丁を持って飛び出してきます。

そして、その腕を止める人物が現れます。


4|周大人、初登場

ここでシリーズの重要人物、周大人が初登場します。

「やめんか」

という一言で場を収める。

そして山岡が、

「俺ならもっと上手いトンポーローを作れる」

と言うと、

「では私の家で作ってください」

となる。

展開が早い。

そのまま山岡たちは周大人の車に乗せられ、巨大な屋敷へ向かいます。

周家は三代続く貿易商。

大人数の客を招くことを前提にした巨大な厨房まである。

ここから物語は、街の中華料理店から一転して、ほとんど料理実験室のような空間へ移ります。


5|だいたい三時間クッキング

山岡が作るのは、本物のトンポーロー。

作業そのものは、それほど複雑ではありません。

まず、皮付き豚バラ肉の毛を剃る。

剃り残しは火で焼く。

軽く茹でる。

酒と醤油を染み込ませる。

油で揚げて色と香りをつける。

皮を下にして深皿へ。

生姜、酒、スープ、八角を加える。

そして蒸す。

問題は最後です。

二時間以上蒸す。

料理の核心は、特殊な裏技ではありません。

待つことです。

だからタイトルが「手間の価値」になる。

難しい作業をすることではなく、必要な工程を途中で省略しないこと。

この回が言う「手間」とは、労苦そのものの美化ではなく、

結果のために必要な時間をちゃんと払うこと

です。


6|本物のトンポーローとは何か

完成した山岡のトンポーローと、宝華飯店の豚バラ煮込みを食べ比べます。

違いは明白です。

周大人の妻は、山岡の料理を「本物のトンポーロー」と評価。

周大人も、

皮のゼラチン質。

その下の脂身。

さらに赤身。

この三つが、それぞれ異なる食感を持ちながら一体になることが重要だと説明します。

宝華飯店の料理は、蒸し時間が足りない。

そのため皮がゴリゴリしている。

料理の名前や材料は同じでも、必要な工程を省けば別の料理になってしまう。

ここでタイトルの意味が、かなり具体的に示されます。


7|店だけが悪いのか

普通の料理漫画なら、ここで、

「職人が手を抜いたから悪い」

で終わります。

ところが第13話は、その先へ行きます。

宝華飯店も、昔はきちんと作っていた。

ところがマスコミに紹介され、客が殺到するようになった。

大量の注文をさばくため、少しずつ手間を省く。

それでも客は、

「有名店だから美味しい」

と言ってありがたがる。

すると、店はさらに省略する。

ここで周大人は、

日本人の客の側にも責任がある

と指摘します。

かなり重要な視点です。

悪い店と騙された客、という単純な関係ではありません。

評価する側が自分の舌を放棄すると、店の質まで下がる。

言い換えれば、

評判は料理店を育てもするし、腐らせもする。

SNSとレビューサイトの時代に見ると、むしろ現在のほうが身近な話です。


8|「中国三千年の伝統の味」

敗北した宝華飯店の料理人は、意外と素直です。

肩を落として帰ろうとしますが、最後に振り返り、

次に横浜へ来たら、今度こそ本当の中国料理を食べさせる、と宣言します。

完全な悪役として終わらせない。

ここも『美味しんぼ』らしいところです。

問題は才能がないことではありません。

人気に追われるうちに、仕事の基準を下げてしまったこと。

ならば、もう一度作り直せばいい。

この再起の余地を残すことで、「手間の価値」は説教ではなく職人の立て直しの話になります。


今回の料理・食材

  • トンポーロー
  • 皮付き豚バラ肉
  • 春巻き
  • フカヒレスープ
  • 牛肉と野菜の牡蠣ソース炒め
  • アヒルの丸焼き
  • 干しアワビ
  • ナマコ
  • 車エビのチリソース
  • 五目そば
  • ワンタン麺
  • チャプスイ麺

主食材・調理法

主食材:豚バラ肉

調理法:蒸し煮


アニメ版ならではの見どころ

山岡の競馬

横浜へ来ても競馬中継。

女性陣が買い物をしている間も競馬。

このあたりは原作よりも、山岡の「休日のダメな青年」感を補強しています。

周大人のベンツ

原作ではロールスロイス。

アニメではベンツ。

どちらにしても、「普通の人ではない金持ち」を一秒で理解させる記号です。

周大人の屋敷のアール・デコ的な内装も含め、1980年代後半の「豪商」のイメージがかなり濃く出ています。

無地のビール瓶

ラストの宴会で登場するビール瓶にはラベルがありません。

茶色い瓶だけ。

原作ではブランドを思わせるラベルが描かれていますが、アニメではかなり抽象化されています。

本筋には一切関係ありません。

しかし、こういう小さな違和感を拾えるのも再視聴の面白さです。


この回の見どころ

第13話「手間の価値」は、

丁寧に作ることは大事です

というだけの話ではありません。

店が有名になる。

客が押し寄せる。

料理人が忙しくなる。

工程を省く。

それでも客は「有名だから」とありがたがる。

さらに店が手を抜く。

こうして、店と客が互いに料理を劣化させていく。

この循環まで描いたところに、第13話の面白さがあります。

つまり、手間の価値を守る責任は料理人だけにない。

食べる側にも、自分の舌で判断する責任がある。

いま見返すなら、私はそこをこの回の中心に置きます。

もう一話だけ、芋づる。

関連する話 第23話「牛なべの味」

店を奪われた老舗牛鍋屋の息子を救うため、山岡は魯山人風すき焼きを改良。薄切り肉をだしに数秒だけ通し、梅干しを日本酒で煮たタレで食べる「シャブスキー」を考案する。雄山もその旨さを認め、評判で店は大繁盛する。

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誰がいて、何を食べた?

06 / 資料・比較DBの奥を開くスタッフ、全登場人物、原作補完、相関図など

回情報

媒体
アニメ
話数
13
初回放送日
1989-01-23

全登場人物

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制作・映像資料

制作スタッフ

アニメ制作スタッフ

監督
竹内啓雄
文芸
小松崎康弘
脚本
田波靖男
絵コンテ
谷田部勝義
演出
谷田部勝義
作画監督
なかじまちゅうじ
美術監督
古谷彰
撮影監督
斎藤秋男
音楽
大谷和夫

YouTube

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